集成材建築の主な構造形式
こんにちは
今月のとりすみコラムを担当します、建築スタッフの東山です。
どうぞよろしくお願いします。
今回は、集成材建築の主な構造形式について、お話ししていきたいと思います。
まず集成材建築の特徴として、
集成材の形状は線上・面状・塊状 自由自在であり、それが大きな特徴のひとつとなっています。
しかし構造用途に使用される集成材は、ほぼ線状のものに限られます。
更に構造性能が保証されるJASの構造用集成材は、全て線状の軸材料です。
要するに、
原則的には一定の構造性能を有する断面がまずあって、これが長さ方向に連続していきます。
この長さの形状によって、通直集成材と湾曲集成材に大別されます。
(通直集成材) (湾曲集成材)
集成材建築の構造形式も、部材である集成材の形状・特徴を活かした構法が基本となります。
集成材建築の主な構造形式は、以下のように分類されます。
(1) 柱 – 梁 構造
主に通直集成材のみ使用して、柱と梁で軸組を構成する構法です。
在来木造住宅でも見られる ごく一般的な構造形式です。
柱 – 梁 構造では、鉛直力に対しては いったん梁が受けて、それを全て柱に伝達して
基礎に到達させます。
一方、水平力に抵抗する方法で、大きく2つの構法に大別されます。
① 耐力壁付軸組構造
原則として、柱と横架材(梁・桁・胴差・土台 等)の接合部は、ピン接合と考えられるため
軸組だけでは架構(柱と梁で組んだ構造)として成り立ちません。
そこで、軸組内に筋かい(ブレース)を設けたり、面材(構造用合板 等)を張ったりして
耐力壁を設けて、壁面のせん断力で水平力(風耐力・地震 等)に耐える仕組みです。
住宅に多い在来軸組構法は、この構造形式です。
② ラーメン構造
軸組の接合部に剛性(モーメント伝達機能)をもたせることで、軸組だけで架構を構成する
構造形式です。 ラーメン(Rahmen)はドイツ語で「枠・額縁」などの意味です。
本来ラーメン構造は、接合部が完全な剛接合になっているものをいいます。
しかし木造の場合は完全な剛接合(部材が変形しても接合部は変形しない)をつくることは
出来ないため、通常は回転ばねを考えた「半剛接ラーメン」として設計されます。
また接合部の性能を高くすると、部材に大きい曲げ応力が生ずるために十分な断面寸法・
断面性能が必要となります。形状・強度に自在性が高い集成材には好相性の構造です。
(2) トラス構造
軸材料3本で三角形を構成すると、接合部がピンであっても安定しています。
一般的なトラス構造は、この三角形を連続させて架構を構成する構造形式です。
またトラスでは原則的には部材に曲げ応力が発生しないため、比較的小径の材料を用いる
ことが出来ます。それにより、軽快な感じを演出することができます。
典型的なトラス構造は、屋根架構における洋小屋トラスです。
キングポストトラス(真束小屋組)やクイーンポストトラス(対束小屋組)が、代表的です。
(3) アーチ構造
木材は、軸方向(繊維方向)の圧縮強度は繊維直行方向の圧縮(めりこみ)強度に対して数倍
強です。なので湾曲集成材をアーチの曲線に一致させると、極めて合理的な構造となります。
実際、アーチ構造は集成材構造の代名詞的なものとしてよく使われております。
集成材アーチには、1本の湾曲材で脚部のみピンをする2ヒンジアーチと、更に頂部にも
ピン接合を有する3ヒンジアーチがあります。
3ヒンジアーチの方が、アーチ材に生ずる曲げ応力が小さいため大きなスパンが可能ですが、
大きな水平スラスト(指示点から外に広がる力)や頂部の変形についても対策が必要です。
アーチ構造の形態的には、円形アーチと山形アーチに大別することができます。
(4) ドーム構造
集成材によるドーム構造は、大きく2つに大別できます。
1つ目は、集成材の立体トラスによって疑似的に球面を構成する、より本来のドーム構造に
近いものです。トラスの構成方法にも各種いろいろありますが、正副多面体の稜線を集成材で
構成する方法や、いわゆるフラードームを構成するのに用いられます。
もう1つは、3ヒンジアーチ構造を放射状に連続させていくものです。
この場合、頂部の接合部に全方向から圧縮力が掛かって、極めて複雑な接合金物が必要に
なります。特に規模が大きいドームでは、頂部にリングを設けて接合部の集中を避けます。
最後に上記の構造形式について、弊社で施工しました物件からいくつか紹介したいと思います。
(ラーメン構造)
(山形ラーメン構造)
(トラス構造)
(アーチ構造) 3ヒンジ
(アーチ構造) 2ヒンジ
(ドーム構造)
以上が、集成材建築の主な構造形式になります。
略略(ほぼほぼ)中大規模で使うメイン処という感じになりました。
いつもながら感じることですが、構造体が現しとなって意匠に取り入れられている建物を見ると、
迫力と優しさが同居した何か頼れる気分になって、そこに居るだけで建物と一体感を感じます。
それだけ「木」の存在は、私たちにとって普段から身近なものであり、昔から馴染みのあるもの
なのではないかな、と思いました。
最後までお読みいただきありがとうございました。
また次回もよろしくお願いします。