木の学校
こんにちは
今月のとりすみコラムを担当します、建築スタッフの東山です。
どうぞよろしくお願いします。
今回は「木の学校」 についてお話ししたいと思います。
木造校舎・RC造であっても内装木質化された校舎、子どもたちの1日の大半を過ごす学校が、
木の活用による環境下でどのような効果(メリット)があるのか。
特に心理面・情緒面・健康面を中心に見ていきたいと思います。
木造校舎・内装木質化による木育面や室内環境面の効果は、大きく以下のように分けられます。
① 木目の1/fゆらぎ効果
② 木の細やかな凹凸による光の散乱
③ 木の吸放湿性能
④ 木の香り
⑤ 木の温もり
⑥ 木の耐衝撃性
⑦ 木の吸音効果
それぞれ、どのような効果があるのでしょうか。
① 木目の1/fゆらぎ効果
自然な模様、色合いによる癒し効果があるとされています。また生体調節という観点からの例として、
木造校舎と一般的なRC造校舎の子どもや教師の様子を比較すると、両者に違いがあるのがわかります。
子どもも教師も、木質環境の方が過ごしやすいことを肌で感じているのではないでしょうか。
② 木の細やかな凹凸による光の散乱
木材の表面には、無数の微細な溝が隙間なく並んでいます。溝に当たった光は鏡のように一様ではなく
複雑に反射されるので、ギラツキの少ないまろやかな光沢を生み出します。
そして有害な紫外線(10~400nm)を吸収する効果が非常に高く、目に優しく疲れにくいとされています。
また木材がもたらす視覚的影響も、「あたたかい・明るい・快適・静か」等の印象が多いとされています。
③ 木の吸放湿性能
夏の高湿、冬の過乾燥を抑制する効果があります。そして校舎の木造化・木質化内装化は、
インフルエンザの流行を抑制する効果もあります。
収納庫の床や壁・収納棚に木を用いることで、調質効果が高まり資料の保存などにも役立っています。
木質の床は木の吸湿性により結露せず、転んで怪我をする子どもが少なく、足への負担も少ないです。
④ 木の香り
フィトンチッドによるリラックス効果(アロマテラピー)を得ることができます。
また桧の匂い成分が、ヒトの免疫細胞(ナチュラルキラー細胞)の働きを上昇させたとの報告もあります。
⑤ 木の温もり
木は細胞という気泡の集合体なので、特に空気を多く含む針葉樹の床材は、冬温かいです。
これはRC造校舎より木造校舎のほうが、教室の温度差が少ない理由の一つだと思います。
また冬季の木造校舎は、強制換気をしなくても教室内の平均二酸化炭素濃度が、学校衛生環境の
基準値(1500ppm以下)を充分に満たしています。
⑥ 木の耐衝撃性
床は歩行時に一定の弾力性と摩擦性能を持つことが必要ではありますが、木造床組み工法による
木材床は歩行の衝撃を適度に吸収するとともに、転倒しても大事に至らない安全性があります。
また木造床の振動や階下の音などの問題については、床下の技術的な対応で解消されます。
⑦ 木の吸音効果
木は当たってきた音のエネルギーを材料内部で摩擦熱として吸収する性能が高いので、反射音が
少なくなります。つまりは、耳障りな残響音が少ないという事です。
コンクリートと比べますと、木質空間の残響音は1/10程度といわれています。
また高周波数値の音を吸収する傾向が高いので、キンキンした音が緩和されます。
以上、「木の学校」の効果を心理面・情緒面・健康面に絞って、木造校舎や内装木質化による木育面や
室内環境面の効果についてお話させていただきました。
木育とは、子どもをはじめとする全ての人が「木とふれあい、気に学び、木と生きる」取組みのことです。
世の中の移り変わりが激しくなる中、私たちの生活環境や周囲の自然環境も例外ではありません。
年々利便性や経済効果について重点を置くようになり、「人と人」「人と自然」のつながりが希薄になって
社会や自然に色々な歪みが生じているように感じます。
そういったことを取り戻そうと、見直されてきているのが「木の学校」なのかなと思います。
木の活用は子どもたちの学校・施設に対する愛着を生むとともに、落ち着いて学習に向かえる形態を
生み出し、学習意欲を高める効果が期待できます。
そして教える側の教師先生も労働環境が改善され、肉体的疲労感の軽減はもとよりメンタル面も健康的に
保つことができ、児童・生徒への教育・指導についても良い影響が出るのではないでしょうか。
また、木を活用して造られた学校は、その建物自体が木の魅力や森林の大切さを伝える教材となります。
木や自然を子どもたちに身近に感じて、自分の通っている学校を好きになってもらって、将来の日本を
背負っていく立派な大人になってほしいな…と。その一役に私たちが携わった「木の学校」があれば、
嬉しいかな…と思いました。
最後までお読みいただきありがとうございました。
また次回もよろしくお願いします。
(参考文献)